戦場 終

若きプリンスが血盟員を引き連れて
ケント城へ凱旋した


新しい城主を称える市民達
王の帰還を待っていた血盟員達
とは裏腹に
どちらかというとこれからまだ戦争をするという雰囲気で
男が予想していた事とはまったく違っていた
男は集団の一番後ろに行き
これまで生きてきた本能だろうか
いつでも逃げれる用意をしていた


若きプリンスが門をくぐり
血盟員達が門をくぐり
そして最後に男が門をくぐると・・・
そこには武装した血盟員が男の取り囲み
城壁には弓を構えた城の衛兵
男はやや怪訝な顔をし剣を抜く準備をした
すると
若きプリンスが男の方を振り返り
いつもの笑顔で
いや、この場合は悪魔のような笑顔というべきか
憎しみが込められた笑顔だった
「ははは、びっくりしたかい?
 僕はあの時のことは忘れていないよ
 貴方が僕を捨てたおかげで
 どれだけの辱めを受けた事か・・・
 血盟員は徐々に抜け始め
 街では事あるごとに殺されかけ
 狩場でも・・・・!
 僕は今の今まで安心して休めたことはないよ・・・
 それも・・・
 全部・・・
 全部・・・・!
 全部全部全部全部全部全部!
 貴方が抜けたからなんだよ!
 貴方がいてくれれば!
 こんなことにはならなかった・・・
 だけど、もう心配はいらない
 貴方がいなくても
 僕はこんなにも強くなれた
 貴方はもう不必要だ
 遊撃を貴方に任せたのは
 あそこで本当なら死んで欲しかったから
 しかし、貴方は生き延びた
 だから!だから!!だからだからだから!
 今度こそ死んでもらうよ・・・
 貴方みたいな存在が僕をまた危険にさせるんだ
 いなくなればいいんだぁぁぁぁぁ!」
それは暴君が生まれた瞬間であり
男にとっては死の宣告を受けた瞬間でもあったが・・・
男は剣を振るい
門に向かって走り始めた
門はすでに閉じようとしていた
後ろを振り向けば若きプリンスの血盟員
上を見れば矢の嵐
男はただひたすらに門を目指した
矢が刺さっても走りつづけた
無常にも門が男の目の前で閉じようとしていたが
男が手に持っていた愛刀を投げ
一瞬だけ閉じるのが収まった瞬間に門の外に出た
男が門を抜けると同時に剣の砕ける音と
門閉まる轟音が響いた
しかし
男は休むことなく森の中へ走り去っていった
後ろではプリンスの血盟員達が門を叩いていた
城壁の衛兵達は男が見えなくなるまでずっと矢を撃っていた


男はどこまで走ったのだろうか
ケント城からかなり遠くへ離れ
森の奥までやってきていた
手持ちの武器はなく
回復用のPOTも先の戦争で全て使い切り
疲れきっていたのか
肩で息をしながら
木にもたれかかれ
意識が朦朧としていた 
近くの茂みからガサガサ・・・ガサガサ・・・と
音がなったのだが
男にはもう戦う気力も立ち上がる気力も逃げる気力も無く
その方向をじっとみるしかなかった
その茂みから出てきたのは
年は17〜8くらいだろうか
まだまだ幼い感じの少女で
右手には不釣合いの片手で持てるような剣
左手には軽そうな皮でできた盾を持っていた
少女は男に気がつくとすぐさま近づいてきて
「君、大丈夫!?」
と声をかけた
そこで男の意識は無くなってしまう・・・


その後ケントは圧政がひかれ
暴君が治める城として有名になっていく


男がどうなったかというのはまた別のお話
ひとまずここで一区切りさせてもらいます
見難い話で全然分かりにくいと思いますが
暖かい目で見て下さい^^;
これからもよろしくお願いします