戦場

男は死を感じた
しかし、そこに不安は無かった
力を求めたが所詮その程度の実力だっただけの事
死への不安よりも
自分の弱さを男は悔やんだ
槍と矢が男を貫くその瞬間・・・


「風の神サイハよ
 大いなる風の神よ
 全てを吹き飛ばす大いなる風を起こさん」


男のすぐ近くでその祝詞が聞こえた
その刹那


「トルネード!」


男の周辺に巨大な竜巻が幾つも出現し
矢を吹き飛ばし
槍で突いて来たナイトを吹き飛ばした
竜巻が収まると
男のすぐ横の何も無い空間から
一人の少年が浮き出るように出てきた
「おにーさん大丈夫ですか〜?」
さきほどの魔法を撃った本人か?と思うような声に
男も少し拍子抜けした
「おにーさん、ひどい怪我だね〜痛くないの〜?
 あ、痛い?それなら〜〜」
ウィザードだろうかスタッフを持ち直した少年が
男に振り返り、スタッフを振ると
「神聖なるマナよ
 傷つき、苦しむものの痛みを和らげん」
スタッフから光が零れ
男を包み始めた
「グレーターヒール!」
光が一層強く輝きを強くし
男を照らし、光が消滅する
「おにーさんこれで痛くないでしょ?
 まったく、一人相手にあんなにたくさんの人数でイジメルなんて
 まったくじょーしきがなってないね!」
上目遣いで男の顔を覗き込んだかと思うと
腕を組み勝手に怒り始めた少年
それを唖然とただ見ていた男は気付いたかのように
少年に話しをかけた
「あ、ありがとう少年
 君のおかげで助かったよ
 しかし、今は戦争中だから俺から離れてくれるとうれしい・・・
 まだいたか」
男が話し終わる前に
先ほどの魔法で吹き飛ばされた連中が戻ってきた
すると、城の方から大部隊がこちらへ向かってきていた
それを見た敵兵は街の方
あるいわ、テレポートして撤退を始めた
少年も
「おにーさんのお友達が来たみたいだね〜
 それじゃ僕もどっかいくね〜〜またねばいば〜〜い」
と言うなりテレポートして去っていった
これが後でまた出会うとはこの2人はまだ知らない
その話はまた別の時に・・・


男は剣を背中の鞘に入れ
大部隊の方へ向くと
案の定そこには男の味方の部隊が来ていた
その先頭はあの若き王子だった
王子は、すぐ男に近づくと
「よかった、間に合ったようだね
 貴方がここを抑えてくれたおかげで
 思った以上に早く終戦することができた
 心より感謝するよ」
といって、男と握手をした
そして、男を含めた血盟員と城へと凱旋した


けれど
これがほんのプロローグだと言う事に
男は気付いていなかった
今から男に災難が始まるという事を・・・