短編集:名も無き暗殺者

その青年には名前が無かった
男が住んでいたのは、光を求める集落
闇の末裔でありながら、人との共存を選んだ
同属からしてみたら反逆者であり
人類からしてみたら異端者である
そうダークエルフという種族でありながら光に憧れた連中が集まる集落
そこにその男は居た
両親は父がエルフ、母はダークエルフという混血児
そのせいもあってか父はダークエルフに母はエルフに迫害を受け殺された
幼くして心に大きく傷を負ってしまった男である
その風貌はダークエルフの褐色の肌にエルフの綺麗な金色の髪を持ち
両目はお互いの種族の目の色を片方ずつもったオッドアイ
まさに異端児というに相応しい男だった
そんな男を、この村の村長は共存への架け橋になると
大事に大事に育てた、【暗殺者】として


青年が成人すると、その能力は瞬く間に周囲が驚きを隠せないほどで
その風貌もあったせいか諸国の王からは黄金の死神の名として
そして、村の中では闇の中の英雄として名が広まりつつあった


そんな彼は常に一人で行動していた
村に居る時も、依頼で人を殺す時も、休む時も
口数は少なく必要最低限のことしか話さなかった
そんな彼を妬む者も少なくは無い
毎日のように同じ同業者(暗殺者)が自分の命を狙ってくるのだ
自分の名声と富を得る為に・・・・・・


ある依頼を受けた日の事
彼はいつものように暗殺する相手を殺した後のことだった
殺したのを確認し、抜け出そうとした時
不意に背中に気配を感じて振り返ると
そこにはまだ幼い少女がこちらを見ていた
今殺した奴の娘だろうか
青年は仕事以外の殺しは絶対にしなかった為
ゆっくりと少女に近づき、少女の耳元で囁いて
首元に小さな麻酔針を指して少女を眠らせた
そして、何事も無く彼はその場を去った
いつものように、いつもと同じ事をした行為だったが
これが後に彼の運命を変える事になった


それから数年の月日が経った・・・・・・